コラム

2023/12/08 コラム

住所、氏名の秘匿制度

民事の裁判を起こす場合、訴状という書類を作成し、そこに裁判を起こす人の住所、氏名を記載して裁判所から加害者に送達する必要があります。

ただ、犯罪の被害に遭われた方が加害者に対して民事の損害賠償請求の裁判を起こす場合、通り魔的な犯行の被害に遭って、加害者に住所や氏名を知られたくないという場合や、DVの被害に遭って避難しており、避難先の住所を加害者に知られたくないという場合もあります。

こういったケースでは、加害者に住所、氏名を知られてしまうことを恐れて、裁判を起こすことを躊躇せざるを得ないケースもありました。住所については、前住所や代理人弁護士の住所を記載するなどの実務上の工夫で対処されているケースもありましたが、氏名を指名を秘匿することはなかなかできませんでした。

そこで、こういったケースでも安心して裁判を起こすことができるように、法律が改正され、令和5年2月20日から、住所、氏名の秘匿決定という制度を利用できるようになりました。

秘匿決定がなされた場合、裁判所にだけ本当の住所、氏名を届出すればよく、訴状など相手方にも送られる裁判書類には「代替住所A」、「代替氏名A」といった記載をして手続が進められることになります。判決や強制執行といった手続に進む場合にも、「代替住所A」、「代替氏名A」という記載のままで手続が進められていきます。

犯罪被害者の支援に取り組む弁護士にとっては待望だった法改正ですので、私も依頼者の方のご要望に応じて、積極的にこの制度を利用していきたいと考えています。

相手に住所や名前を知られたくないけれども、泣き寝入りすることなく裁判を起こしたいという場合、ご遠慮なくご相談ください。

Copyright © 弁護士 佐藤 敬治(札幌双葉法律事務所 所属)