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2024/08/02 コラム

離婚事件について〜その5 慰謝料〜

離婚事件についてのコラムの5回目は慰謝料についてです。

離婚するとき、慰謝料を請求できるのか知りたいという方は多いかと思います。
離婚する場合、どんなときでも慰謝料を請求できるというわけではありません。
慰謝料を請求するためには、慰謝料請求権発生の原因となる事実が必要です。
慰謝料請求権が発生する典型的ケースは、相手方配偶者に不貞行為(不倫)やDVがあったケースです。
DVは、身体的DV(暴力等)ばかりでなく、精神的DV(暴言、モラハラ等)も含みます。

不貞行為にしろ、DVにしろ、実際に請求するときの大きな課題になるのは証拠の確保です。
慰謝料を請求する場合、慰謝料を請求する側が、慰謝料請求権の発生原因になる事実が存在することを立証する必要があります。
不貞行為であれば、ラブホテルに入る現場の写真や、親密さを窺わせるLINE・メールのやり取りなどが有力な証拠になることが多いです。
そのほかに、ドライブレコーダーの画像やカーナビに残されていた走行履歴からラブホテルの利用が発覚した例や、ED治療薬の消費状況などを参考にした例もあります。
問い詰められて相手方が不貞行為を認めるケースも少なくはありませんが、記録残しておかなければ証拠にはなりませんので、相手方が認めた場合には録音や書面等の証拠を確保しておきたいところです。

DVについては、不貞行為以上に証拠の確保が難しくなりやすいです。
DVを受けている最中に録画や録音に踏み切ることは実際上容易ではなく、家庭内での出来事であるため目撃者もいないことが多いからです。
暴力を受けて痣などの傷跡が残ったときは、写真を撮っておいたり、病院を受診して診断を受けておくことが重要です。
また、身体的な暴力については、警察に通報して刑事事件化してもらうことも有効です。
精神的暴力のケースでは、可能な範囲で録音を残しておくのが有効です。
どうしても客観的な証拠の確保が難しい場合には、いつ、どのような状況で、どのような内容のDVを受けたのか、日記等に残して記録化しておくことも考えられます。
このように、DVを理由に慰謝料を請求しようとするときは、証拠の確保に向けた準備を進めておくことが重要ですが、他方で、証拠を確保する暇もないほどに危険が差し迫っているケースも少なくありません。
そのような場合には、身の安全の確保を最優先にして、直ちに避難すべきです。

次に気になるのは、慰謝料額の相場かと思います。
慰謝料の金額は、婚姻期間の長さ、子どもの有無と年齢、慰謝料の原因となる行為の内容、当該行為が行われた期間の長さ、当該行為が婚姻関係にどのような影響を与えたのか等の事情によって異なってきます。
裁判での請求額としては、300万円〜500万円くらいの金額が選択されることが多いかと思いますが、実際の決着額としては、事案の内容にもよりますが、平均的には100万円〜200万円くらいの枠の中が決着している例が多いのではないかと思われます。
もちろん、内容によって300万円以上の慰謝料が認められている例もあり、最終的には個別事情に応じた判断になりますが、一つの目安として頭に入れておいていただくのもよいかと思います。

Copyright © 弁護士 佐藤 敬治(札幌双葉法律事務所 所属)