2024/05/30 コラム
離婚事件について〜その3 養育費・婚姻費用について〜
未成年の子どもがいる夫婦間の離婚事件において、親権に続いて重要なテーマになるのが養育費です。
話し合いにより両親のいずれかが未成年の子を監護することになった場合、子を監護する親(監護親)は、子を監護しない親(非監護親)に対して、養育費の支払いを求めることになります。
また、離婚成立前の別居段階にある夫婦においては、まだ離婚が成立していない以上、夫婦としての扶養義務は消滅していません。
そのため、別居後、離婚成立までの間、夫婦の中で収入の多い側の当事者は、収入の少ない配偶者に対して、毎月の生活費を支払う義務を負います。この生活費の支払義務を「婚姻費用分担義務」といいます。
養育費・婚姻費用の金額は、家庭裁判所の裁判官らの研究報告において提案された標準算定方式に基づいて計算するのが一般的です。
皆様の中にも、インターネット等で調べて、養育費・婚姻費用の算定表をご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。この算定表は、夫婦双方の年収を標準算定方式に当てはめて計算した金額の目安を表示したもので、法律相談の場でも、簡易的な説明のためによく用いられています。
算定表を見れば金額が出てくるなら、弁護士に相談する必要もないかなと思われるかもしれませんが、養育費・婚姻費用の金額の計算は、そう単純なものではありません。
この標準算定方式は、当事者の収入から公租公課(税金)、職業費、住居費、保険関係費を控除した金額を基礎収入とし、これをご家族の人数や年齢等に応じて定められた生活費指数に基づいて割り振ることで毎月の養育費・婚姻費用を算出するものです。
ここで注意する必要があるのは、当事者の収入から控除される公租公課等の金額は、実際にかかっている金額ではなく、法律や統計に基づいて算出された理論値・標準値であるということです。
そのため、標準算定方式において前提とされている標準的な事情から逸脱するような特殊事情があるケース(税負担の軽減措置を受けている、高額の医療費を支出しているなど)においては、標準算定方式を修正すべき場合があります。
また、年金収入しかないケースなど、就労によらずに収入を得ているケースでは、職業費を控除せずに養育費の金額を算定する必要があるため、やはり標準算定方式の修正が必要になります。
その他に、収入は低額であるものの、高額の預貯金があり、貯蓄を取り崩して生活しているようなケースでは、収入の金額をどのように考えるかが問題になり得ます。
このように、養育費・婚姻費用は、単純なようで奥が深い分野です。当事者同士で話し合って決める前に、一度は専門家の相談を受けることをお勧めします。