コラム

2024/03/15 コラム

離婚事件について〜その1 離婚の進め方〜

私が数多く取り組んでいる事件類型の一つに離婚事件があります。
今回から何回かにわたって、離婚の手続きを進めるためのポイントについて解説していきたいと思います。

離婚事件では、結婚してからの年数、離婚を考えるようになった理由、ご夫婦の職業・収入・財産の状況、別居している場合におけるご自身と相手方の居住地、子どもの有無や年齢、持ち家の有無、ローン等の負債の有無・金額といった事情によって、検討すべき課題が違ってきます。
例えば、親権者の指定の要否、養育費の金額と支払期間、財産分与の金額、持ち家の処分の要否、年金分割の手続の要否、離婚成立までの婚姻費用(生活費)の請求の要否といったことです。
今回は条件面の話の前に、離婚するためにどのような手続があるのかということを書きたいと思います。

離婚には、大きく分けると協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります。
協議離婚は、役所でもらってきた離婚届の用紙にお互いが署名・捺印し、役所に提出することで離婚が成立するものです。
子どもがいる場合には、どちらが親権者になるかを離婚届に記入する必要があります。
お互いが離婚することについて納得していて、親権や養育費等の条件面での争いもなければ、協議離婚の方法が時間的にも費用的にも負担を抑えられる方法になります。

とはいえ、離婚することについてなかなか相手方の同意を得られなかったり、離婚という方向性自体は一致していても、親権や財産分与などの条件面での協議が難航して協議離婚の成立まで行きつかないこともあります。
そのような場合に次の選択肢になるのが調停離婚です。
調停離婚は、家庭裁判所に離婚調停の申立てをして、家庭裁判所の調停委員会に間に入ってもらって話し合いを進める手続です。
調停委員会は、裁判官1名と、男性・女性1名ずつの調停委員の合計3名で構成されます。
多くの場合、当事者同士が直接顔を合わせることなく、順番に調停室に入室し、調停委員を介して自分の意向を伝えたり、相手方の考えを聞いたりしながら話し合いを進めていきます。
当事者同士の話し合いで合意に至らなかった場合でも、調停委員会に間に入ってもらうことで、お互いに気持ちの整理がついて離婚について合意できたり、条件面の問題点を整理してもらって円滑に話し合いを進めることが期待できます。

ただ、離婚調停は、あくまでも話し合いによる解決を図るための手続なので、調停で話し合いをしても合意に至らなかった場合には離婚は成立しません。
調停で話し合っても解決しない場合の最後の選択肢が裁判離婚です。
裁判離婚は、家庭裁判所に離婚を求める訴訟を提起し、相手方の意思にかかわらず、裁判官の判決によって強制的に離婚を成立させるものです。
子どもがいる場合には親権者を定めなければならないので、離婚を認める判決が下される場合には、親権者についても裁判所が判断します。
また、養育費や財産分与、年金分割についても裁判所の判断を求めることができますし、不貞行為やDVなどの慰謝料発生事由がある場合には、慰謝料の支払いについても合わせて請求することができます。

このように、裁判離婚は条件面も含めた争いの解決を目指す上で有用なものですが、当事者の意思にかかわらず強制的に離婚を成立させるという強力な効果を持っているため、法律が定める離婚原因がある場合でなければ、離婚を命じる判決を出してもらうことはできません。
離婚原因は5つで、①配偶者の不貞行為、②配偶者による悪意の遺棄、③配偶者の3年以上の生死不明、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、とされています。
不貞行為など明確な離婚原因がある場合には、裁判離婚まで視野に入れて手続を進めていくことも多いですが、性格の不一致など、法律上の離婚原因に当たるとまでは言えない事由による離婚の場合には、調停段階までで離婚を成立させられるように方針を考えていく必要があります。

裁判離婚にまで至る場合には、弁護士への依頼はほぼ必須になってくるかと思いますが、協議離婚、調停離婚の段階でも、弁護士の介入が望ましい場合は少なくありません。
どのような方法で手続を進めていけばよいのか、迷ったときはお気軽にご相談ください。

 

※ 法律上の離婚原因のうち、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないことについては、この規定を削除するとの改正法案が令和6年3月に通常国会に提出されています。
これは、裁判実務上、配偶者が不治の精神病にかかっているというだけで直ちに離婚を認めることはできないとされている一方、精神病への罹患を含めて、夫婦間の諸般の事情を考慮して婚姻を継続し難い重大な事由があると認められるか否かという観点で離婚の可否を判断する傾向が見られることを踏まえて、④の規定を削除した上で、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の判断要素の一つとして精神病への罹患の事実を考慮することとするという考えに基づくものとされています。

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